【完】DROP(ドロップ)



昨日、圭矢に作成したメール。



――会いたい



いつもなら、こんな事を打ったって、すぐに消して新しいのを打ち直す。

でも昨日は、それ以外の言葉なんて見つからなくて。


メール打てなかった。


送信出来なかったメールは保存されたまま、圭矢に届くことのないまま。

あたしの胸の中に募る密かな想いを、携帯に少し預けて……この想いが少し軽くなればいいのにな。



今日は遅番で、少し朝寝坊出来る。

たっぷり寝れる日なのに、中々寝付けなかったあたしは、いつもより少ない睡眠時間となってしまった。



携帯からDROPの曲が大きく流れ始めた。



あたしの携帯からDROPの曲が流れるのは、圭矢からの着信と朝のアラームだけ。
朝から、圭矢の声を聞くと元気になれるんだ。



「んん……」



もう朝?
今…何時。


手を伸ばし、時間を確認しようとして見た画面。

それは、毎朝見慣れているアラームの画面なんかじゃなかった。



――着信 圭矢



寝ぼけていたあたしは飛び起きて、通話ボタンを押した。




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