【完】DROP(ドロップ)



俺の顔を見ながらクスクスと笑う雫を怒ると、



「あ、ごめん」



って、やっぱり笑ってる。


笑い事じゃなかったんだからね。

だって……



「だって、雫が来ないって言ったの初めてだったから」



初めて断られたんだ。



今まで1度だって断られた事なんてないから。

凄く不安になって。



「だから、アイツと何かあるのかなぁって思って…」



そう思ったんだ。



ねぇ、雫。
なんて答える?


『違う』


ってハッキリ力強く答えて欲しい。



だけど、雫の口から出た言葉は、全く想像もしていないものだった。



「今日ね、見たの」



少し哀しそうな笑みを零す。



「杉下奈央さんが、圭矢の部屋に行くのを」



そして、そのまま笑顔の消えた顔は、ゆっくりと下を向いてしまった。
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