【完】DROP(ドロップ)



俺は雫に泣かれると弱い。



だから必死にティッシュを渡した。


やっと泣き止んでくれた雫は、



「ねぇ、圭矢。どうしてバイト先まで来てくれたの?」



なんて、1番聞いて欲しくない内容を聞くんだ。



上手く話を誤魔化そうとしてるのに、こんな時だけは鋭く突っ込んでくる。

観念した俺は、覚悟を決めた……。



「……雫が……から」

「へ!?」



覚悟を決めたはずなのに。


いざってなると声が小さくなってしまって。



だけど、逃げる事なんて出来ないよね。



雫の気持ちを信じる。

俺が抱きしめた時、手を振り解いてアイツのところへ行かなかった雫を……信じる。



「雫が! 今日、来ないって言ったから」

「それだけでバイト先まで来たの?」



あからさまに馬鹿にした感じ。


それに、ちょっとムッとしてしまった俺。


だって、そりゃ馬鹿な事をしたなーとは思う。

けどさ、

バイト先へ行くのだって凄い決意だったんだから……。
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