【完】DROP(ドロップ)
本当、面倒な人なんだから。
いちいち驚き過ぎなんだよね。
携帯を乱暴に置くと、はぁーっと大きな溜息をついた。
そのまま雫を見下ろすと、俺から目をパッと逸らし、
「圭矢、あ、あたし帰った方がいい、よね?」
って、それじゃ意味ないじゃん。
「いいよ、ここに居て」
「でっ、でも。来るんでしょう? 杉下奈央さん」
「うん、呼んだよ」
「じゃあ……っ」
「わかるから。来たらわかるから待ってて」
もう少し。
もう少しだけ待って。
すぐ来るから、もう少しだけ時間をちょうだい。
――ピンポ、ピンポ、ピン、ピン、ピンポ……ピンポーン♪
「おーいっ! けっいしくーん」
ふざけた事をしてくれる。
それでなくても週刊誌やスポーツ新聞に載ってるのに、こんな目立つマネして。
ドンドンと大きな音をたてて、ドアを叩く陸の姿が想像出来て大きな溜息が零れた。