お姫様は男装騎士
食事の間に着くと既にお父様は席についており、
姿のなかった伯父様と一緒にお話をなさっていた。


どうやら伯父様はお父様のところで騎士の話をして
今に至るみたいだ。


私とお母様が席につくとお料理が運ばれて来る。


「さて、今日は我が最愛なる娘、
アリスとのお別れ前の最後の晩餐になる」


とお父様は涙を流していた。


「父上、まだ最後ではありませんよ。
しばしの間、離れ離れになるだけです」


とお兄様が苦笑いしながら言うと、


「しばし離れるだけだが、
悲しいのだ。
お前は悲しくはないのか、
ヴァール?」


とお父様は涙を拭いながら言う。


「悲しくはないのかと言われますと、悲しいですよ。
だって、最愛なる妹と離れてしまうのですから。
ですが、アリスの将来のためですから」


とお兄様はワインを1口呑んで言った。


「ところでアリス、
髪の長さはどうするんだい?」


と伯父様がソワソワしながら尋ねてきた。


私の今の髪の長さは腰より下の方である。


「安心してください。
髪は切らずにウィッグをつけますから」


と私が言うと、


「そうなんだ…。
安心したよ」


と伯父様はホッと安堵の息をついた。


それからはいろいろなお話をして、晩餐会は終わった。


この前起きた出来事、
人前で失態をしてしまった事、
従者の前で転んでしまった事など。


明日からは知らない土地で過ごすため、
何が起こるかわからない。


(この日のことは覚えとかなくっちゃ!)


そう心に誓ったアリスだった。
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