お姫様は男装騎士
馬車に乗り、


「お母様、お元気で!!」


と扉の窓から顔を出して手を振る。


お母様も手を振り返す。


いつの間にか涙を流すお父様とお兄様も手を振っていた。


なんだ、結局お兄様も泣いてるじゃない…


少し離れたところで馬車の中に顔を戻した。


あ、何かが流れてくる。


その何かを止めようとしたが、


「無理に止めなくて良いんだよ。
もう、誰も見ていないのだから」


よしよしと頭を撫でる伯父様。


さらに涙が出る。


この涙はこれでおしまいにしよう。


だって、これからは新しい出会いがあるのだから。


「ありが…とう…ござい…ます…」


と泣きながら言うと、


「落ち着くまで待ってるから」


と優しく微笑む伯父様。


それから少し経ったあと、


「お待たせしてしまい、すみません」


と深々と頭を下げる私。


その姿を見て伯父様は慌てていた。


「だ、大丈夫だから。
頭を上げて!」


「分かりました」


と頭を上げると頭を撫でられる。


「よしよし、今日からは僕がお父さんだからね。
困った事があったらなんでも言って」


と微笑む伯父様。


たしか、
伯父様は結婚をされておらず、
独身のままだとお母様から聞いたことがある。


だからだろうか、
私の事を娘のように大事にしてくださっているのは。


「す…、リス…、アリス!」


と呼ばれハッと我に返る。


「すみません、父上」


と謝ると、


「大丈夫だから。
それと…今から父上って呼んでくれるのだね、カロナ」


と嬉しそうにする伯父様…いや、父上。


「カロナ、外を見てご覧」


と促されるまま外を見ると、


「……綺麗」


と呟いていた。


川の両脇に桜の木がいくつも植えられており、
その桜が満開に咲き誇っていた。


「でしょ?カロナにも見せたかったから」


と微笑む父上。


かわいい人だと思ったのは秘密にしておこう。


「ありがとう…ございますよね」


「いいのいいの」


「父上、桜は好きですか?」


と聞いてみた。


「えっと…好きだけど?」


突然の事に驚く父上。


「そうですか…」


「えっ?!突然どうしたの?」


「いえ、何でもありません。
ただ、聞いておきたかっただけです」


「そっ、そうなんだ」


突然、こんな事を聞かれたら驚くのも無理はない。


(今度、秘密の場所を教えよう)


そう思っていたアリスだった。
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