お稲荷様のお呼びです!
顎に添えられた手を振り払って、真剣な目で戒哲を見た。
私のその行動にすこし戒哲の眉間にしわが寄る。
そんな表情を見ても逃げることなくその目を捉えて、ハッキリと言ってやった。
「私はものじゃない」
「は?」
「力があるからって私はものじゃない。私の時間を誰かに指図されて動くなんて絶対お断り。諦めて帰って」
淡々とそう告げると、戒哲の動きがピタリと止まった。
しばらくして、独り言をぽつりと呟いたかと思えば口角を上に上げた。
「見かけによらず気は強いってか」
「私の言いたいことが分かったなら帰って」
「へいへいへい……って素直に帰るような性格に見えるか?」
ぐいっと近寄ってきたかと思えば力強く抱きついてきた。
突然のことに頭が真っ白になるけれど、体は自分を守ろうとちゃんと動いてくれた。
ぐはっ……と鈍い声と共に戒哲の体がゆっくりと離れていく。
昔近所の空手道場の親方に護身術として教えられたのが、未だに体は覚えていてくれたみたい。
綺麗にみぞおちが決まってガッツポーズを決めていると、戒哲が怪しい笑みを見せた。
な、なんだかやばい気がする。
もう一度構え直してどうしようかと考えていると、何かが弾けたように戒哲が笑い出した。