お稲荷様のお呼びです!
体を走っていた緊張感が解けて、勢い良く立ち上がった。
どうにかして逃げないと、これは今までにないくらい危険な目に合う気がする。
距離を取ろうとするものの、戒哲と名乗るこの男の子がゆっくりと近づいてくる。
「ちょ、ちょっと待ってください!説明が足りません!」
「んーじゃあ、簡潔に言えばあれだ。俺の嫁に来い」
「は、はい?!」
ますますよく分からなくなってきた。
どうして私を嫁に……?と考える一瞬の隙を見て距離を狭めてきた。
気づいた時には逃げ場はもうなくて、背中に当たった壁の感覚に考えることをやめた。
そっと髪を撫でて来たかと思えば、くいっと顎を上へ上げる。
「あんたのその力が欲しい」
「その力であなたは何をしようって言うの?」
「革命……ってところか。まあ、あんたには関係ないことだ。黙って俺に着いてくれば痛いことはしない」
伽耶ちゃんが言ってたことはこれなのかもしれない……。
あの巻物に描かれた通りに、もし私にこの人が力を示せば……嘉さんとの契約が切れてこの人に嫁ぐことになるってことだよね?
でもそんなことされたら私の日常は一生帰ってこない。
そんなの絶対に嫌だ。
嘉さんだけで振り回されるのはもう懲り懲りなんだから……!
自分勝手な人にこれ以上私の時間を奪われるもんですか!