跳んで気になる恋の虫
「ナミーーー!」
沙知を先頭にして、部活のみんなが駆け寄ってくるのが見えた。
「もう、探したよーーー!神社に裏にいるって言ったって、どこだかぜんぜんわかんなかったよ」
林の奥まで行ったとき、待ち合わせに間に合わなくなりそうだったので、沙知に神社の裏の林を散歩してるってメールしておいた。
私が遅いから、探しに来てくれたんだ。
沙知は私の前で立ち止まると、隣にいる虫屋にぺこりとお辞儀する。
「はじめまして。ナミの友達の栁川沙知です」
あ……虫屋だって気づいてないんだ。
「あ、えっとね、この人は……」
「ナミのカレシだよね?」
「あ、ああ、えっと……違っ……」
私が慌てて訂正しようとしたとき、虫屋が口を開いた。
「俺は、まだ飛島さんのカレシではありません。飛島さんに選んでもらえるように、これから気を引いてみようと思っているところです」
……えっ?
「飛島さん、俺は、虫の気の引き方はわかるんだけど、人間の、しかも女の子の気の引き方はよくわかりません。初めて人間の雑誌を買って読んだ記事を参考に、髪を切ってみた次第です。他にどんなことをしたら俺は飛島さんに選んでもらえて、ペアリングできるのでしょうか」