跳んで気になる恋の虫


「参ったついでに言っていいですか?」

「うん、な、なに?」

「飛島さんの気を引こうと思って、頑張って髪を切ったのに、飛島さんの浴衣姿の方がよっぽど俺の気を引いてます」

……えっ?

「俺、虫しかたとえられないけど、今日の飛島さんはモルフォチョウみたいです」

「モルフォチョウ?」

「はい、今飛島さんが来ている浴衣の色と同じように美しい青い羽をもつチョウです」

「青い羽?」

私は、自分の浴衣の袖を見てみる。
確かに、水色と青のグラデーションの浴衣を着ていた。

「俺が、一番会いたいと思ってるチョウなんです」

「虫屋が、一番会いたいと思っているチョウ?」

「でも……今日会えました。というか、もうずっと前から会えていたんです。俺、それに気づくのが遅くて……飛島さんがカレシにキスされそうになったところに居合わせたとき、喧嘩するカブトムシの気持ちがわかった。飛島さんが、他の男に触れられてるのがすごく嫌だったんです」



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