僕等の青色リグレット
「ね、ねぇ、晴登くん」
「どうした?」
「麻子さんの手、さっきから押入れの方を指してない?」
「押入れ? 言われてみれば、そんな気もせんが……」
麻子さんが座っているベッドから真正面、テレビの隣に引き戸式の押入れがある。麻子さんの動きはただ手を叩いているだけのようだけど、何かを伝えたがっているようにも見える。
晴登くんは再び体を屈め、今度は麻子さんの両手を握った。
「麻子さん、押入れになんかあるんか?」
「あ……あ……」
「あるんやな? 開けてもいいか?」
「みず……こ……」
後から考えれば、絢子さんの了承を取って押入れの中を見させてもらえばよかったのだけど、そのことがすっぽり抜けていた私たちは、抜き足差し足で押入れに近づき引き戸を開けた。
ごくりと唾を飲む。
そこにあったのは、約30センチ四方の茶色い箱で中には古い新聞が数十枚入っていた。例の私たちが見つけた記事が載っている新聞もある。
それから、何かメモのようなもの。
走り書された字を見た私と晴登くんは「これだ」と目を合わせ頷きあった。――と、
「お母さーん。どぉね? 何か話してくれた?」
私たちが飛び上がらん勢いで驚いたのは、言うまでもない。