僕等の青色リグレット


「それで、カケル。こんなところに1人で来た理由はなんだ? ミナツの森は危険な場所も多いけぇ、兄ちゃんたちと一緒じゃないと入ったらダメだと言われとるやろ」

「うん、そうなんだけど」

「けど?」

「ぼく、お母さんの約束守りたかったから、どんぐり探しに来たの」


どんぐり??

いまいちよく分からない話に首を傾げながら、晴登くんは質問を続ける。


「約束ってのは、なんだ? カケルのお母さんって確か入院してなかったか?」

「うん、してるよ。海の近くのびょういんにいるの。お母さんね、こんど赤ちゃん生まれるんだよ」

「へぇ、赤ちゃん!」


思わず口を挟むと、カケルくんはニコッと笑って大きく頷いた。だけどすぐ泣きそうな顔になってハーフパンツの裾をギュッと掴む。

子供の機嫌は夏空のようにコロリ変わるようだ。


「ぼく、お兄ちゃんになるの。だから良い子になるってお母さんと約束したんだけど、できなくて、ぼく……ぼく……」

「だから泣くなって、カケルは今でもじゅうぶん良い子やろ」

「でも、ぼくのせいでお母さん、入院しちゃったし」


どういうこと? って晴登くんに目で訴えると。

彼は「俺も詳しく知ってるわけやないんやけど」と言いながらも、カケルくんのお母さんが臨月であること、切迫早産で入院していること、医者から絶対安静だと言われてることなどを教えてくれた。




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