涙が落ちたあの日から
コンコン
「奥田さん」
事務所のドアをノックされ、スタッフの1人が中を覗いた。
「休憩中ごめんねー」
「はい? どうしたんですか?」
「なんか……奥田さんにお客様なんだけど」
「私に?」
事務所から防犯カメラに映るその人を見ると、男の人が事務所近くに立っていた。
誰だろ……。
知らない人だ。
あのジンクスのせいで、いつも声をかけられていた時のことを思い出す。
またそれかもしれないと思うと、一瞬面倒に感じた。
デスクに広げたおむすびや飲み物を片付けると、私は嫌々ながらも事務所を出た。