涙が落ちたあの日から
~埠頭に続くハイウェイざわめきの消えた海に、約束はあの時のままだね今でも~
イヤホンから流れる、耳に心地の良いイントロと歌詞。
大好きなMoonの曲を聴きながら、私はバイトへ向かう毎日。
あれから、今まで知らなかった、拓真の様々な悪事が明るみになった。
そんな人が近くに居たことも、そんな人に狙われていたことも、今考えれば恐ろしい……。
拓真は、自分が匡の殺害を命じ、あの追突事故を起こさせたから、事故があった後も私の周りに現れていた"匡"という存在に、いつもビクビクしていたんだろう。
居るはずのない人間が、近くに居ることに……。
調べられている警察でも、まるで何かに取り憑かれたように、「匡が匡が……」と口にすると聞いた。
これは、あの女性記者が教えてくれたことだけど……。
あの女性記者は、あれからこの事件を色々調べていると言っていた。
拓真が匡を狙った理由、それはやはり私が原因だったようだ……。
自分の思い通りにならない私の、周りに現れる男、匡の存在が邪魔だったらしい。
邪魔だからという気持ちだけで、あんなことを起こしてしまうのか……。
人としての道理を持っていなかった拓真の存在が、今思い出しても恐ろしい。