エリート上司の過保護な独占愛
「どうしてって、泣きそうな顔をしてる君を放っておけるわけないだろ」

(こんなときまで、優しいなんて……)

 我慢していた涙が滲みそうになる。そんな彼女の頭に裕貴が手を伸ばし二度優しく撫でた。

「なんか、もめてたみたいだけど、逃げ出すようなことか?」

 そう言って差し出されたのは、例の本だった。裕貴もさっきの話を聞いていたはずだ。ちゃんと話をしなくてはならない。

 沙衣は決心して、先延ばしにしようとしていた話をする。

「課長……あの今日の約束はキャンセルさせてください」

 一瞬驚いたような顔をした裕貴だが、冷静に話を聞こうとする。

「……どうして?」

「私……実は課長に話をしてないことがあるんです。こうやって慣れない靴を履いて頑張ってお化粧して、読まない本を買いに行ったり、新しいことを始めるのが苦手なのに料理教室に通ったり……この本に影響されてやったことなんです」

 実際のところ絵美が色々と動いてくれたことだ。しかし沙衣自身もこの本を読み、裕貴に振り向いてもらうために画策をしたのは間違いない。

 裕貴がそういった女性を嫌うなら、自分は彼にふさわしくない。
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