エリート上司の過保護な独占愛
「わかりました……すぐに戻ります」

 電話を切った裕貴は、まだ腕をつかんだままだ。

「もう打ち合わせが始まる時間だから、行く。でも今日の予定はキャンセルするつもりはない。ちゃんと約束通り……今日の夜から明日一日の沙衣は、俺のものだから」

 そう言うと、さっと踵を返して階段の方に歩いて行った。

 その背中がいつも見ている裕貴のそれとは違っていた。そこに怒りを感じ、瞳から我慢していた涙があふれだし、頬を伝う。

「……っう……う」

 急いで拭うも、いったん崩壊した涙腺はどうしようない。なんとかハンカチで顔を覆いながら会社を出た。

 梅雨独特のじっとりとした空気が、まとわりつく。昼間は五月晴れだったはずなのに……今はどんよりとしている。

 ――それはまるで沙衣の気持ちそのものだった。
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