エリート上司の過保護な独占愛
「……っん、ふっ」

 そこまで来てはじめて、お互いがバスローブ姿で抱き合っていることに気が付く。ケーキと花束のサプライズで、この先に起こるであろうことをすっかり忘れてしまっていた。それも裕貴の作戦かもしれないが。

「沙衣、悪いけどケーキは後だ」

 唇が離れた瞬間、裕貴がそうささやくと、軽々と沙衣を抱き上げた。小柄な沙衣だったが、それでも成人女性だ。決して軽くはないはずなのに、裕貴のたくましい腕はそれを感じさせない。

 奥手といえどその辺の知識はある。だからこそ、この先に起こることに不安を感じている。しかしこの腕の中であれば、その不安も取り除いてくれそうな気がする。

 ベッドに到着すると裕貴は優しく、沙衣をベッドに横たえた。部屋の明かりは落とされていて、ベッドサイドにあるランプだけがふたりのいるベッドを照らしている。

 裕貴が首筋に顔をうずめようとする。しかし手を裕貴の胸に当ててそれを制止した。

 一瞬驚いた裕貴だったが、そのままだまって沙衣の目を見る。

「あの……私、きっとうまくできないです。あの、初めてなので」

 日付が変われば二十六歳になる。一般的には初体験をすませている女性が多い年齢だ。裕貴をがっかりさせないためにも、沙衣は恥を忍んで最初にそのことを伝えた。

 どんな反応をするだろう……。よくないことも想像してしまう。しかし裕貴の顔はどこか安心したように見えた。

 ほほ笑んだ裕貴から小さなキスが頬に落とされた。

「そういうことは、ほら、キスの反応なんかで予測済み。それよりも拒まれるかと思った。俺にとってはそのことの方が何よりもつらい。早く……沙衣の全部を俺のものにしたい」
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