エリート上司の過保護な独占愛
「もしもし……」

≪もう、やっと出た! 何度も電話したんだからね!≫

 電話から漏れ聞こえる声からは、昼間の彼女の落ち着いた雰囲気とは違いはしゃいだ様子が聞こえてきた。
≪実はさっきのお店に、スカーフを忘れてきたみたいなの。もし近くにいたら取りに行ってほしいと思って――≫

 裕貴がチラッと沙衣を見た。その顔に気まずさを感じ取ってしまい、悲しくなる。

(やっぱり……今日はふたりで会っていたんだ)

 ここまで信じていた気持ちがぷっつりと切れてしまった。ソファに置いていたバックをつかむと、そのまま立ち上がる。

「沙衣?」

 裕貴が電話中にも関わらず、沙衣を呼び止める。しかし返事もせずに玄関へ向かった。

(まだ、泣いちゃだめ。まだ……)

「ちょっと、待って。――悪い切るぞ」

 玄関まで沙衣を追いかけてきた裕貴は、相手の返事も待たずに電話を切ってしまう。

「どうしたんだ、急に。話があったんじゃないのか?」

 涙がこぼれてしまいそうで、顔を上げることができない。

「離してください……」

 やっとのことで出たか細い言葉は、その一言だった。

 しかし裕貴は納得することができず――

「ダメだ。こんな状態で帰すことなんてできるはずないだろう? ちゃんと話をしてくれないと、沙衣の気持ちがわからないだろ」

 それはそうだ。だから話をしにきたのに。しかし先に事実を知ってしまいもうどうしていいかわからない。

 沙衣は半ばやけになって、口を開いた。
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