エリート上司の過保護な独占愛
 自虐発言を禁止された沙衣は、心の中でそうつぶやいた。

 しかし勘のよい絵美は、さっさとそれを見抜く。

「何言ってるのよ。相手のために綺麗になるんじゃないの。自分のために女を磨くのよ」

「自分のため?」

 思わず聞き返した。

「そう、特に沙衣は今の自分に自信が持てないんでしょう? 私が言っても信用しないんだから、自分で実感しないと。とりあえず〝百聞は一見に如かず〟よ。ほら、時間がないのよ。急いで」 

「はい」

 半信半疑だったが、絵美が足を速めたので沙衣もそれに合わせた。そしてふたりは開店と同時に店員に丁寧にお辞儀をされながら、ビルへ入っていった。

「う~ん。こっちよりこれがいい。さ、持って」

「え、でもこんな派手な色――」

 否定しようとした矢先、絵美の鋭い視線が向けられて口をつぐんだ。選んだ服が今沙衣の目の前に山のように積まれている。

「これは、一着あると着回しがきくし、こっちはさし色として持ってていい色だわ」 

 沙衣も絵美の意見には賛成だ。しかし身に着けるのが自分だとなると話は違ってくる。

 (こんなの似合うわけないのに)

 いつも好んで身に着けるのは、ベージュやネイビーなどだ。仕事が私服ということもあり、社内は比較的自由だか冒険できない性格のせいで、いつも同じような恰好をしていた。

「いいから、ほら。全部試着して」

「ぜ、全部ですか⁉」

 無言でうなずき、顎で試着室を促した絵美。それに従い、しぶしぶ試着をすることにした。

 しぶしぶといったけれど、絵美の選んだ洋服を着た自分を鏡で見たとき、沙衣は驚いた。

 派手で似合わないと思っていたけれど、ペパーミントのサマーニットは顔色をよく見せてくれた。それに全体にレースのあしらわれた白いスカートを合わせると、夏らしい華やかなスタイルが出来上がる。もちろんオフィスにもOKなスタイルだ。

 新しい自分に出会えたような気がして、カーテンをあけて絵美に披露した。
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