エリート上司の過保護な独占愛
 一口飲んだあと、自然とほっと息が漏れた。体の疲れが抜けていくような気がする。そんな沙衣にマスターが、手作りクッキーを差し出してくれた。

「忙しかったの? 最近沙衣ちゃんが来てくれないからどうしたんだろうね? って話をしてたんだよ」

「なんだかなかなかタイミングがなくて、だから灯りがついてるのを見てつい入ってきちゃいました。ばたばたしてたから」

「うちは大歓迎だよ」

 マスターの言葉に、紗衣は笑みを漏らした。

「紗衣ちゃん、忙しいときそこ自分の時間をしっかりとらないとダメよ」

「そうですね」

 奥さんとの会話で、ふと絵美からもらった本に書いてあった言葉を思い出した。

【自分の時間を大切にして、自分自身を磨きましょう】

 普段着ない服を着て、自分に手をかけておしゃれをすることで、少しは自分に自信がもてた。けれど、中身がともなってなければ意味がない。

 色々なことにチャレンジして、そしてこういう穏やかな時間に自分を振り返ることで、いい女になれると書いてあった。

 紗衣はまだそんな実感などない。けれど、少しずつ実践することで前に進めるなら努力してみようとそう思った。

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