御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
嫌がらせ以外のなにものでもないと思う。
だが理由がわからない。
(彼女にはマティスさんという恋人がいるのに……どうして?)
もしかして彼は恋人ではないのだろうか。
いや、ふたりはしっかりと体を寄せ合っていたし、ときおり彼は涼音の首筋に顔をよせて、キスをしていた。
あまりじろじろ見ては失礼だと思ったが、つい見てしまうくらい、ふたりの関係はアツアツだったはずだ。
「うーん……」
早穂子はバスタブの縁に腕をのせてもたれかかる。
だがいくら考えても答えは出そうにない。当然だろう。
早穂子にとって涼音はほぼ他人で、人となりを知らないのだから。
(これって悩むだけ不毛よね……)
だが考えずにはいられない。
涼音の真意を――。
それが恋というものなのかもしれない。
「はぁ……」
胸の奥の重い石を吐き出すように溜息をついた瞬間、
「大きなため息だねぇ」
と、すぐ近くで声がした。
「きゃっ……!」
顔を上げると、すりガラスの扉の向こうに、男の影があった。
「えっ、はっ、始さんっ!?」
「そうだよ~。君の始ちゃんだよ」