御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
ここは素直に甘えて、今まで通り。早穂子がもうおなかいっぱいだと思うまで、夢を見せてもらうのが正解なのだ。
「――ごめんなさい、私……いまちょっとズルかったです」
早穂子は真面目に謝罪の言葉を口にする。
「あなたに不安を癒してもらおうとして、拗ねてしまって……」
正直に話すと、肩の荷が下りた気がした。
案の定、始はわかっているとばかりにうなずく。
「ああ……いいんだよ、それで。俺だってサホちゃんに機嫌よくいてほしいし、傷ついたんなら話してほしいから」
そして始は早穂子の額にかかった前髪を指でかき分けて、額に口づける。
「涼音のことはごめん。たぶん俺が彼女に嫌なことを言ったから、君がお返しされたんだろうね」
「嫌なこと?」
「あー、うん……。あの場にいた連中はみんな知ってることだけど、彼女と一緒にいたマティス……ちょっと悪い噂のある男だから、注意した方がいいと……まぁ、男女の間のことなんだから余計なお世話なんだけど……それで失敗した」
始は苦笑しながら両腕を早穂子の上半身に巻き付けて、ギュッと抱きしめる。