御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「未成年だったから、名前も出なかったし……すぐに忘れられてしまう小さなニュースだったけど……リゾートグループの跡継ぎが山で事故死って、対外的にも結構ヘビーでしょ……」
始はどこかうつろな眼差しでささやく。
彼の唇の両端は、いつものように品よく持ち上がっていたが、それは彼が長年そうやって微笑み続けた癖――のような気がした。
こんな時ですら、人に悪い感情を持たれないように無意識に振舞っているのかもしれない。
早穂子はぎゅっと眉根を寄せて、それでも始の言葉に耳を傾ける。
「荒れてたから、当てつけに山で自殺したんだなんて……言うやつもいたよ……。でも、兄貴には家族を悲しませるつもりなんかなかったはずだ……。年相応の、ちょっとした反抗期だ……珍しくとも何ともない……。でも、死んだ……。それでもうちの家族は一時期、めちゃくちゃになって……。両親ともども、ずっと自分たちを責めてたし……」
始は、ふうっと息を吐いて一瞬、眉根を寄せる。
「だから俺は……それから、他人が望む自分でいようと、思ったんだ……。兄貴とは違う。たくさん友達を作って……誰からも望まれて、頼りにされるような……両親を心配させない、理想の息子になろうと思って……ずっと、ずーっと……努力して……」