御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「実はね、誰が会おうって言っても、なんだかんだ理由をつけて会ってくれないんだ。俺も向こうに行ったとき連絡したけど、あっさり断られたくらいで」
「断られた? 始さんにですか?」
聞き間違いだろうか。
人付き合いの権化のような男が、他人とのコミュニケーションの機会をわざと避けているなんてことが、あるんだろうか。
「えっ……その、どこか具合でも悪いんでしょうか……心配をかけないようにしているんじゃ……?」
始と別れてからずっと、早穂子は彼の幸せだけを祈ってきた。
もしかして遠い異国の地で大変な目にあっているのではないかと思うと、途端に不安な気持ちが込み上げてくる。
胸の奥が急にバクバクし始めて、早穂子は思わず手のひらを胸に当て、唇をかみしめてしまった。
「いやいや、ごめん。そういうんじゃない」
白臣は早穂子を安心させるように、首を振る。
「面と向かって話してないし、なにを言っても憶測になる。だから俺が彼の現状を代弁するのはちょっと違うと思って。でもまぁ……俺は山邑始という男をますます好きになったかな。たぶん彼は、遠回りでも正解を選んだんだよ」