御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
どうしても信じられない。思考が追いついてこない。
言葉も出ないので、相変わらず、目の前の彼を見つめることしかできない。
彼は着慣れた感じのカットソーに、薄手のジャケット、デニムという相変わらずきれいめのカジュアルで、趣味は変わってないようだが、これは夢ではないのだろうか。
何度もまばたきをする早穂子に、始は少し困ったように笑って、
「驚かすつもりはなかったんだけど……」
地面に散らばったものを拾い上げると、それから最後に拾った鍵を、「これで全部かな?」と、差し出してきた。
「たぶん……」
早穂子はぼうっとしながら、鍵を受け取る。
その一瞬、彼の指先が手のひらに触れて、全身にびりっと電流が流れる。
こんなふうに早穂子を痺れさせる男など、この世にふたりといるはずがない。
どうやらこれは夢ではないらしいと、ようやく気が付いた。
(じゃあ、なんで?)
早穂子は何度も瞬きをしながら、始を見上げる。
「とりあえず……立てる?」
「あ……はい」
確かに、いつまでもここに座っているわけにはいかない。
(なんだか、まだ信じられないけど……)
彼の手のひらに手を伸ばすと、重ねられる前にぐいっと手首をつかまれる。
気が付けば早穂子の体は、あっという間に始の腕の中に、引き寄せられていた。
「ただいま」