御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

付き合っていた期間はそれほど長くなかったはずなのに、なにを見ても始を思い出して、ふとした瞬間にポロポロと泣いてしまう自分が、辛かったというのもある。

始のことをゆっくり思い出にするにしても、場所を変えて落ち着きたかった。

「いや……たまたまって……そんなわけないでしょ」

始は首の後ろをがしゃがしゃとかき回した後、早穂子をまっすぐに見下ろす。

「あそこでお茶を飲みながら、君が帰ってくるのを待ってたんだ。四時間くらい」
「はい?」
「本当は、二次会でも三次会でも、突撃して行きたかったけど。さすがに呼ばれてもいないのに、顔出すのはまずいだろうと思って。社内の見知った顔もあるし、君を困らせたくなかった」
「あの……始さん?」

始がなにを言っているのかわからない。

早穂子が眉をひそめて怪訝そうな顔をしたのを見て、始は「えっと……」と言葉を濁した後、

「君に会うために帰国したんだ」

と、少し早口でささやいた。
< 249 / 276 >

この作品をシェア

pagetop