御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

「え?」
「いやー……まいったよね。帰るときは普通に連絡しようって思ってたんだけど」
「――」
「でも二年半って、長いだろ。今更かなと思うと、できなくて……」

始の表情が、くるくる変わる。

口調はとても『軽い』のに、へらっと笑った後、しゅん、と眉毛が下がって、一気に大型犬らしさが増す。

始はこんなに表情豊かだったろうか。

そんなことを考えながら、

「じゃあ、どうしてここに?」

早穂子は背の高い始をじっと見上げた。

「……コンプライアンスに抵触する方法で」

始がくしゃくしゃと頭の後ろを指でかき混ぜながら、ふにゃっと笑う。

(コンプライアンス……)

聞き覚えのある返事に、少しだけ考えて。

「また!?」

と、思わず大きな声が出た。

彼との初めての夜、一夜の出来事だと割り切ろうと、早穂子は身を引いたというのに、始は社内データを調べて、早穂子の自宅に押し掛けてきたのだ。

(あの時も、同じことを言って……)
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