御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

彼と出会ってからの、ふたりの思い出が、走馬灯のように駆け巡る。

余裕ぶって笑って抱き合った懇親会の夜。
それから彼と過ごした甘い時間。

『恋は楽しむものだろ?』

どこか諦めたような寂しそうな顔をしていて、弱い自分を隠して、他人のことばかり考えていた。
他人を愛したことがない、愛せないと苦しんでいた人。

自分が重荷になるくらいなら、と、考え抜いて、決断して、離れたのだ。

自分を大事にしてほしかったから……。

そんな彼が、自分に会いに来たと言う。

鼻の奥が、つん、と痛くなった。

「なっ……なんなのっ……」

早穂子の声が震えた。

「なんでっ……」

会えて嬉しいとか、そんな単純な感情だけじゃない。

「ごめん。でも、君に会いたかった」

夢で何度も聞いた始の声が、すぐ近くで聞こえる。

会いたかったと言われて、胸がぎゅっと苦しくなった。

会いたいだなんて――そんなの早穂子だってずっと思っていた。

ずっと、ずっとだ。
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