御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

それからとりあえず、早穂子は自分の部屋へと始を招いた。

本当は目の前のカフェに入ればよかったのだろうけれど、子どものように、しゃくりあげるレベルで泣いていたので、ほかに行く場所が思いつかなったのだ。

「部屋に入れたからって、かっ……勘違い、しないで、くださいねっ……」

早穂子はハンカチで涙を拭きながら、部屋の中に入れた始をにらみつける。

「うん……しない」

始はどこか緊張したようにこくりとうなずいて、部屋の真ん中に突っ立ったまま、あたりを見回していた。

(もう、なるようになれだ……)

早穂子は始をそのままにして、洗面台で顔を洗う。

当然、メイクはひどいことになってしまったので、いっそ落としてしまおうと、コットンで肌をぬぐいながら、ぼうっと鏡の中の自分を見つめる。

(部屋に上げたから勘違いしないで、なんて……我ながらかわいくないことを言ってしまった……)

この二年半、ひと時も彼を忘れたことはなかったのに、いきなりすぎて感情がバグを起こしている気分だ。

(いや、そもそも……始さん、会いたかったとは言ってくれたけど……どういう意味かはわからないし……)
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