御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
早穂子はじゃぶじゃぶと顔を洗うと、バスルームに置いていた部屋着代わりにしていたコットン素材のワンピースに着替え、キッチンでミネラルウォーターを出して、コップに注ぐ。
「始さん、お水飲みますか?」
「いや、いいよ。ちゃぷちゃぷだから」
「四時間もカフェにいたんですもんね」
早穂子がからかうと、始がクスッとおどけたように笑って、引き締まったウエストのあたりを手のひらでぽんと叩く。
前の部屋から持ってきたダイニングテーブルに向かい合って座った。
始はなにも言わず、けれど少し懐かしそうにテーブルを手のひらで撫でた後、顔を上げる。
「――ギリシャに行く予定だった取締役が、家庭の事情で海外赴任が難しくなってね。優秀な彼を失うわけにはいかないから、という理由で、俺が代わりに行くことにした。もちろん、山邑リゾートの副社長としての判断だけど、君と離れて、自分を立て直すのにちょうどいいとも思ったんだ」
始がゆっくりと話し始める。
色々聞きたいことはあるが、始の口から、すべてを話してくれるのを待つことにした。
早穂子は、こくりとうなずきながら、始の言葉に耳を傾ける。