御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
その瞬間、始がこぶしを口元にあてて噴き出したが、早穂子はそれどころではなかった。
涼音に、始といっしょにいるからと、どこかの上流階級の娘だと勘違いされたような気がしたのだ。
「彼女が波佐見焼が好きだっていうから、ちょっと来ただけだよ」
始はそう言って、持っていた皿をそっと元に戻した。
「山邑くんは、いつまでこのあたりにいるの?」
「今日は嬉野のどこかに泊まるよ。明日には帰る」
「そう、短いのね。じゃあ予定が会えばまたどこかで」
「了解。連絡する」
そこで涼音はまた早穂子にも会釈して、くるりと踵を返し立ち去ってしまった。
(なんていうか……華やかできれいで、しっとりしてて……美人だったなぁ……)
そう思いながらも、胸の奥にモヤモヤとしたなにかが広がっていく。
(山邑くんって呼んでたな……口調も親しい感じで……いつも会ってるんだ……)
そもそも山邑始の交友関係は世界中に広がっている。
そしてこういうのはなにも涼音ひとりのことではないのだろう。
山邑始の周りには、洗練された人間関係が構築されているのだ。