御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「ああ、なんだ」
だが始はすぐにわかったのか、早穂子から手を話し、ポケットに指をひっかけた。
「涼音も同じ飛行機だったんだな」
「そうみたいね」
(あ……! たしか……柳町涼音さん……!)
スーツではないワンピース姿なので、一瞬誰かわからなかったが、始と一緒に行った波佐見焼の工房のオーナー、柳町涼音だった。
「お久しぶりです」
早穂子も慌てて涼音に会釈する。
まさかここで再会するとは思わなかったので、心臓の鼓動が早まる。
「“何者でもない”蓮杖さんね。お久しぶりです」
涼音は、早穂子がそう名乗ったのを思い出したらしい。
にこやかな笑顔を浮かべて、上品に会釈した。
「サホちゃん、彼女もバッカスの会のメンバーなんだ」
「一応創設メンバーなのよ。改めてよろしく」
涼音はフフッと愛嬌たっぷりに笑って、それから早穂子に手を差し出してきた。
「あっ、こちらこそよろしくお願いしますっ!」
早穂子も慌てて、その手を握り返した。
柳町の手はやわらかく、スベスベしていて、まるで上等な陶器のような滑らかさだった。