御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~

(そっか……柳町さんも一緒なんだ。バッカスの会は毎回十人以上は必ず集まるって言ってたし……中には女性だって当然いるわよね……)


だから別におかしな話ではない。

そう思いながらも、始の態度がひっかかった。


(始さん……彼女のこと、涼音って呼ぶんだ)


自分は“サホちゃん”で彼女は“涼音”

どちらがより親しいかと考えたら、圧倒的に呼び捨てのほうではないだろうか。


(でも、バッカスの会の創設メンバーということは、当然私よりずっとずっと長い間、友人関係なんだから……私が焼きもちを焼くのは筋違いだ……)


呼び方ひとつでモヤモヤしてしまう自分が情けなくなる。

早穂子は始の背中に隠れながら、ぎゅっと唇をかみしめた。


「じゃあ、行こうか」


結局三人でタクシー乗り場へと向かうことになった。


「ところで今回、小鷹くんは来るの?」


涼音の問いに、
「関西に出張で来てるから、行けたら行くってさ。新婚ホヤホヤだから、顔を見せたらすぐ帰っちゃうかもしれないけど」
と、始は答える。


涼音と始の会話に出てきた『小鷹』というのは、大手寝具メーカーの『KOTAKA』の御曹司のことだろう。

山邑リゾートの寝具は、すべて『KOTAKA』製なので、早穂子もその名前を知っていた。


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