御曹司の蜜愛は溺れるほど甘い~どうしても、恋だと知りたくない。~
「じゃあ山邑くん、早穂子さん、またあとでね」
「ああ、またあとで」
始が軽く手をあげるのに会わせて、早穂子は会釈をしつつ、ロビーに入っていく涼音の後ろ姿を見送った。
「私たちは入らないんですか?」
そう言って始の顔を見上げると同時に、
「お待ちしておりました」
年のころは四十代くらいだろうか、落ち着いた雰囲気の白髪まじりの男性が近づいてきて、丁寧に頭を下げた。
おそらくマネージャーだろう。
早穂子は急に、自分が山邑リゾートのいち社員であるということを思い出して肩身が狭いような気分になる。
(皆さん働いているのに、なんだか申し訳ないな……)
しかもGWのかきいれ時だ。
自分が東京本社の社員ということは誰も知りえないだろうが、つい始の背中に隠れるように身をひそめてしまった。
「ほかのメンバーは何人来てる?」
「四人お着きです。昨晩遅くに到着されて、まだやすまれているようです」
マネージャーの言葉に、始は腕時計を見ながら苦笑する。