秘密の陰陽師 【肆】上
「はあはあ…」
術に霊力を使ったからか何なのかは分からないが俺の額からも大量の汗が流れ、息をすることも苦しく思えた
時計を見ると夜中の2時を指している
俺は医者を呼ぶために携帯を取った
通話ボタンを押そうとした瞬間
最も恐れていた事態が起こった
「し…ゅ…ん…っ」
聞こえるはずのない、葵の声が聞こえたんだ
パッと葵の方を振り返ると虚ろな目をして苦しそうにしている葵の姿があった
そんなはずはない…俺は確かに術をかけた
あの術は俺が解除するまで目を覚ますことなんて絶対にないはずなのに…
目の前には微かだが意識はあり、言葉を発する葵の姿があるのだから。
助けを求めるように必死に俺に手を伸ばしている
嫌な汗が大量に出て来る
パニック…そんな言葉が今の俺にはぴったりだ
あの術は大量の霊力を使うから今の俺にはもうあの術を試す霊力も度胸もない
苦しみ続ける葵を助けられない自分が憎くて仕方ない