側婚
ガラッ。
「「「いらっしゃいませ」」」
店の扉が開く音がして見ると、入ってきたグレーのスーツの男性に向けていつものように笑顔を見せる私。
『そっか…』
『だからもしも、私が結婚するなら…』
結婚するなら…。
「すいません」
「はい」
グレーのスーツの男性に呼ばれて、私は急いで向かう。
「注文ですか?」
「はい。豚カツ定食を一つお願いします」
「豚カツ定食一つですね?」
「はい」
「分かりました。少々お待ち下さい」
その場から立ち去ろうとしたその時。
あっ……。
グレーのスーツの男性はシルバーのスマホをいじり始める。
私はまだここに居るのにもうスマホ。
私に全く興味がないんだ…。
『私が結婚するなら、私に恋愛感情がない人…』
彼は私に恋愛感情がない人だ…。