側婚
「お待たせいたしました。豚カツ定食です」
私は手にしているお膳をグレーのスーツの男性のテーブルの上に置く。
コン。バシャッ。
「あっ!」
すると、お膳の角がテーブルの上に置いてあった水の入ったコップに当たり、テーブルの上が水浸しに。
「すいません!! すぐに布巾を…」
ドン!!!
「たっ…」
「イテえなぁ!!!」
ぶつかった大柄の作業服の男性ににらまれる。
「すいません!!!」
私はすぐに深く頭を下げる。
「気をつけろよ!!!」
「はい!
すいませんでした」
私はもう一度深く頭を下げる。
「…大丈夫ですか?」
グレーのスーツの男性が私を心配そうな顔で見ている。
「はい…。あっ! 急いで布巾を…」
「急がなくて良いですよ」
「…えっ?」
「急いでないですから。
ゆっくり取ってきてもらって良いですから」
あっ…。
今の言葉で気持ちがすごく落ち着いた…。
「はい…」
「おい!!!
おい!!!」
声のした方を見ると、さっきぶつかった大柄の作業服の男性が私をにらんでいる。
私を…呼んでるの?
「行って下さい」
「は…はい……」
行きたくないなぁ……。
「心配しなくても、怒ってないと思いますよ。
大丈夫…」
すごく安心感もある…。
「はい!」
『一緒に居て、落ち着けて、安心感がある人』
彼は一緒に居て、落ち着けて、安心感がある人だ…。