側婚

「すいません!!!
拭きますね!!!」

私は大柄の作業服の男性の対応を終えると、布巾を持って、グレーのスーツの男性の所に行き、水浸しになっているテーブルの上を拭いていく。

「あの男性…怒ってなかったでしょ?」

「あっ…はい。全く…」

「良かったですね」

あっ…。

目尻が両方ともキレイに下がり、口角も両方とも均等に上がっている。

作られていない、本当の笑顔…。

「はい…」

そういえば私だけじゃないこの定食屋の店主の長倉(ながくら)夫妻にもこの笑顔見せてたな…。

きっと誰に対しても作り笑顔をしないんだ…。

良い人…。

『死ぬまで側に居てくれそうな人』

彼は死ぬまで側に居てくれそうな人だ…。

私と…

「結婚しましょう」
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