側婚
私がズボンのポケットからスマホを取り出すと。

「あっ…」

「もしもし」

帆乃日にスマホを奪われて、勝手に電話に出る。

「帆乃日!!!」

何で私の電話に出るのよ!!!

平太さんだったら、どうするのよ!!!

「はい。はい。はい」

誰? 誰? 誰?

「はい」

帆乃日が私のスマホから右耳を離す。

「誰? ちょっ…」

帆乃日は私の質問に答えず、私の右耳にスマホをあてる。

「帆乃…」

〈結?〉

〈お母…さん?〉

お母さんの声だ…。

私は自分のスマホを自分で手にすると、帆乃日はスマホから手をどけた。

〈どうしたの?
何かあった?〉

朝から私に電話してくるなんて珍しいよね?

〈何かあったのは、結。
あなたの方でしょ?
仕事を仮病で休んで、帆乃日ちゃんの所に居るなんて…。

平太くんと何があったの?〉

〈どうして……。
私が仕事を仮病で休んだ事…知ってるの?〉

風邪をひいて体調が悪いからって、私は今日、食堂を休んだのだ。

〈平太さんが家に来て言ってたのよ〉

〈平太さんが…来てたの?〉

〈そうよ。
食堂に行っても居ないからって、実家に帰ったんじゃないかと思ったみたいで、来てたのよ〉

〈平太さん、仕事は?〉

〈休んだみたいよ。
結に大事な話があって、今すぐ話したいからって〉

平太さん……。
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