風薫る
「とりあえず、図書館に行くことは確定だから、予定を立てようか」

「そうだね。私、明日から図書室に来ないから、できれば今日中に決めておきたいな」


宣誓すれば絶対全力を尽くせるので、必殺・黒瀬君に宣言してやる気を維持する作戦。


「テスト勉強?」


うん、と頷く。

図書室に来ないというだけでテスト勉強がするりと出てくるなんて、やっぱり聡い人だ。


「黒瀬君と図書館に行くんだもん、ちゃんとやり切りたいなあと思って」


あっそういえばあそこ違った、わー待って絶対計算間違った、うわあああってなると悲しい。


図書館では楽しいことだけ考えていられるようにしたい。


そうだね、と黒瀬君が穏やかに笑った。


「あの、確認なんだけど」

「うん。確認?」

「うん。……ええと」


首を傾げた私に向かって座り直して、真面目な瞳でこちらを覗き込む。


私たちは二人とも話すときは目を見て話すんだけれど、大事な話をしたいときは体ごと相手の方を向く。


何か、大事な話があるということだった。


「木戸さんは」


言い淀む黒瀬君に、うん、と小さく相槌を打つ。


「木戸さんは……テストが終わったら来る、よね?」


図書室に、を省略しているというのは分かった。


それは分かったけれど、黒瀬君が何を心配しているのかは分からなくて。


「来るよ……?」


迷いながらも、それだけは返す。
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