風薫る
「はい、ゆーびきりげんまん」
「……嘘ついたら針千本のーます」
指切った。
一緒に歌って、絡めていた手を放す。
握る代わりに甲に重ねた手を見やって黒瀬君が笑うから、私は切れ長の目を覗き込んだ。
「ねえ、黒瀬君」
「……うん」
揺れる目を見つめる。
綺麗なその目の中に私が映っている。
「来るよ」
本を読みに。
黒瀬君に会いに。
「こんないい場所を手放すなんて絶対しないよ」
「うん」
「だから、大丈夫だよ」
「……うん」
重ねた手を少し握ると、大きな手の甲がぴくりと跳ねた。
黒瀬君は手をひっくり返して手のひらを上にしてから、小さく握り返してくれた。
「黒瀬君は?」
「俺は」
言葉が欲しくて聞いてみたら、困った表情をされてしまった。
でも、私だってすっごく恥ずかしかった。
おあいこじゃないと納得しないんだから。
じいっと見つめる私に根負けしてか、黒瀬君がますます困った顔をして、口を開いてくれた。
「……俺は」
「うん」
「木戸さんが来なくなって、放課後会えなくなるとしたら」
うん、と無声音で頷く。
少し俯いて、言葉を探して。
憂う顔をゆっくり上げた黒瀬君が、私の目を見据えた。
「……そうしたら、きついよ」
「……嘘ついたら針千本のーます」
指切った。
一緒に歌って、絡めていた手を放す。
握る代わりに甲に重ねた手を見やって黒瀬君が笑うから、私は切れ長の目を覗き込んだ。
「ねえ、黒瀬君」
「……うん」
揺れる目を見つめる。
綺麗なその目の中に私が映っている。
「来るよ」
本を読みに。
黒瀬君に会いに。
「こんないい場所を手放すなんて絶対しないよ」
「うん」
「だから、大丈夫だよ」
「……うん」
重ねた手を少し握ると、大きな手の甲がぴくりと跳ねた。
黒瀬君は手をひっくり返して手のひらを上にしてから、小さく握り返してくれた。
「黒瀬君は?」
「俺は」
言葉が欲しくて聞いてみたら、困った表情をされてしまった。
でも、私だってすっごく恥ずかしかった。
おあいこじゃないと納得しないんだから。
じいっと見つめる私に根負けしてか、黒瀬君がますます困った顔をして、口を開いてくれた。
「……俺は」
「うん」
「木戸さんが来なくなって、放課後会えなくなるとしたら」
うん、と無声音で頷く。
少し俯いて、言葉を探して。
憂う顔をゆっくり上げた黒瀬君が、私の目を見据えた。
「……そうしたら、きついよ」