風薫る
もし叶ったら、絶対楽しくなるはず。

黒瀬君とだもん、絶対楽しくて幸せだ。


お願いして頭を下げた私の形相に、多分あまりの必死さが滲んでいたんだと思うんだけれど、黒瀬君が少し瞠目した。


だ、駄目かな。もっと話がしたいんだけれどな。


黒瀬君は少し俯いて肩を震わせて、おかしそうにくすくす優しく笑ってから、ゆっくり頷いてくれた。


「いいよ。どこに行こうか。行きたいところある?」


ええと、と脳内に地図を広げる。


「確か、図書館の近くにカフェがあるはずだから、そこでよければ」


ご飯を食べたら、お腹を落ち着かせる意味も兼ねて少し歩けばいい。


図書館はそんなに遠くないから、きっと話しながら遅めにゆっくりのんびり歩いてちょうどいいくらいのはず。


「分かった」


やった。


快諾してくれた黒瀬君に、満面の笑みになるのを自覚した。


やった、嬉しい……!

黒瀬君とお出かけだ、ご飯だー!


「黒瀬君ありがとう!」

「こちらこそ誘ってくれてありがとう、木戸さん」


にこにこする私に、黒瀬君もにこにこしてくれた。


よし、さあ、はりきって予定を詰めていこう。
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