Sweet Love
***



 あのあと、一人にして欲しいと朱菜ちゃんに言われたわたしは、涙を拭いてから萩原くん達の所へ戻った。


 でも何故かそこには、裕子と牧原くんの姿がなく、萩原くんだけがそこに居た。ログテーブルに頬杖をつきながら、ぼーっと窓の方を見つめてる。何か、考え事をしている風にも見えた。


 わたしは、背後からそっと萩原くんに話し掛けた。



「…萩原くん、…裕子達は?」



 萩原くんは、頬杖を崩す。彼は驚いたように振り返って、わたしを見上げた。



「…あいつらなら、さっきジュース買いに言ったよ。持ってきたやつ、全部飲み干したらしい」

「え…すごい。全部飲んじゃったの…」



 そう言いながら、わたしは萩原くんの横に腰を下ろした。



「らしい。それより石田、大丈夫なの?」

「大丈夫。…急に消えたりしてごめんね。ちょっと、お腹痛かっただけ…」



 萩原くんは、わたしを遠慮なく見つめる。じっと見られているのがあまりにも恥ずかしくて、わたしは視線をログテーブルに落とした。



「……泣くほど、きついの?」



 ――泣いたの、バレちゃってる…。



 なるべく明るい口調を心掛けて、わたしは笑う。



「本当に大丈夫」

「あまりにもひどいようなら、すぐ言って」

「うん…」



 あのあと、わたしは朱菜ちゃんに言われた。


 まだわたしを許したわけではないと。あんなことしたけど謝る気はない、と強く言われしまったのだ。
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