Sweet Love
***



「はーい、集合してー」



 先生は、このあとの予定について説明し始めた。


 山頂にいるわたし達生徒は、これから山を降りなければ当然帰ることができない。帰りはどうやら、ロープウェイに乗って下山するらしい。降りたあとは、バスに乗って高校に戻ってから解散となる。


 説明を聞いてから順番に移動し、三〇人ほど乗れそうな大きなロープウェイに乗り込んだ。


 最初はゆっくりと低速度で山を下る。だが、徐々に加速していった。


 窓側に立っていたわたしは窓から下を見下ろす。あまりの急な高さに、わたしは顔を強張らせた。



 ――こんな急な斜面の山を、今まで登ってきてたんだ…。

 でも、キレイ…。



 高さはそれなりにあるけれど、ロープウェイから見える最高の景色に見惚れてしまう。何より、見晴らしが素敵だ。


 腹痛を忘れかけていたわたしは、携帯を開いたあと、すぐさまカメラモードにして写真を撮った。



「…うふふ」

「石田、何笑ってんの。気味悪いよ」

「…あ、あの、また写真撮っちゃった」



 わたしは撮った写真の画面を、萩原くんに見せつけた。



「お」



 萩原くんは太陽光のせいで画面が見えないのか、手の平で携帯に影を作ると、画面に顔を近付けた。



「これさ、俺にも送ってよ」

「…いいよ。でもわたし、…アドレス知らない」

「じゃあ、連絡先交換しようか」



 萩原くんは自身の携帯を取り出すと、自分のデータを開いた画面をわたしに見せてくれた。



「ハイ、これ」



 何だか後ろから視線を感じるんだけど、気のせいだろうか。その方向に目を向けようとして、わたしはやめた。



「…あ、うん」



 見たとしても、この中は他の生徒達で埋め尽くされている。誰が見ているかなんて、探すのも不可能だろう。 視線が気になったが、わたしは自分の携帯に彼の連絡先を登録し始めた。
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