虹の翼

ケイオスをケイオスの自室まで連れていき、ケイオス付きのマーサに目覚めたら温かい飲み物を出すように伝えてから自身の執務室に行き、アズールの事を考えていた。

「リヒト。」そう言うと俺の護衛役、リヒトを呼び出して

「アズール侯爵家の執事は今回の事件を知っていたか?」

「存じていたようです。『私ごときの言葉は届かなかった。』と言ってました。」………

「密告するなりあったろうに。」俺はそれが疑問だった。

アズール侯爵家に毒の使用許可はアズール家その者が皇族の血が濃かったり直系が何らかの理由で全員いなくなったりしたとき用のスペアと言う意味もあった。

だから侯爵、と言ってもほぼ公爵と同じ権限はあった。

……だから、なのか。王の座が欲しかったから女侯爵はこんな愚かな事を。

「弱味を握られていたようです。『病弱な妹がおり、密告すれば妹の薬代などどう工面する?』と。」俺の執務机の抽斗から勅命状用の紙を取り出しすらすらと考えていた事を書いた。

「リート」俺の従者を呼び

「その執事にこれを。内容は『来年度新設される学院の教師に命ず』」事実上の執事引退。これが罰になる。

執事は本人が望めば老齢になっても出来る。……実際ヴァルカン公爵家の執事はかなりの老齢だが執事としてかなりの優秀な人材だ。流石は筆頭公爵家の執事なだけはある。

「畏まりました。」そう言うとリートはアズール侯爵家に向かった。
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