君が思い出になる前に…
「祐作!絵美ちゃん見つかったって!」母さんが駈けてきた。
「ほんとに?」
「うん、絵美ちゃんのお母さんからだったのよ。絵美ちゃんね、部屋にいたんだって…。どういう事なんだろうね…?」母さんが不思議がっている。
「部屋にいた?隠れてたって事?」
「さぁ?」
「ちょっと行ってくる!」
「馬鹿言わないでよ!あんたは寝てなきゃダメ!」
「ごめん!」
おれの腕を掴んだ母さんの手をふりほどいて駆け出した。
「こら!祐作!待ちなさい!」
母さんの制止を振り切り、病院を飛び出した。


「元宮です。夜分すみません」
絵美の家のインターフォンに話しかけた。
ドアが開き、お母さんが出てきた。
「元宮さん、ごめんなさいね、ずっと探してくれてたんですってね。怪我?」
額の包帯に気がついた。
「あ、大丈夫です。大した事ないです。あの、絵美、絵美さんは?」
「部屋にこもったっきり、出てこないんです。なにがあったのか、聞いても話してくれないし」
「あの…、ちょっとお邪魔してもいいですか?」
「え、えぇ、どうぞ」
「失礼します」
そう言って家に入らせてもらった。
「あの、絵美さんの部屋って…、どこですか?」
「二階の奥の突き当たりよ」
お母さんが二階を指差して教えてくれた。
階段を上がり、絵美の部屋に向かった。まだふらついている気がする。
「絵美、絵美、おれだよ」
ドアをノックして中に声をかけた。
するとドアがカチャっと音をたて、スーッと開いた。
「絵美、どうしたの?」
「祐ちゃん!」
その瞬間、絵美が抱きついてきた。
泣いている。
「何があったの?」背中に手をまわし、なだめながら言った。
「あたしね、あたし未来を見てきた…」胸の中で動揺しながら絵美が小さく答えた。
「えぇ!?ど、どういう事!?」
驚いて聞き返した。

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