君が思い出になる前に…
「お姉ちゃん先に行くよ!お弁当作っておいたからね!」
ドアの向こうから半分怒鳴り声のように聞こえた。
そして玄関の閉まる音がした。
しょうがない…。また今日も学校に行くか。
着替えて居間へ。
朝ご飯がテーブルに用意されてる。
それに弁当も。しかも可愛いハンカチに包まれて…。
15年前はこんな弁当じゃなかった。
大半の男は新聞紙に包んで持っていってた。それが男らしかったから。
こりゃなんか冷やかされそうな予感…。
そんな事を考えながら朝食を食べる。
ヤバい!遅刻する!

なんとか遅刻せず学校には着いた。昨日と変わりない。当たり前だけど、当たり前じゃない世界。
「元宮く~ん、おはよう~」
背中から声がした。振り向くと絵美が手を振って駆け寄ってきた。
「お、おはよう」
おぉ、今日もスカートが短いなぁ…。嬉しいけど…。
「はい」
と言って、ちょうだいってしてる。ん?なんだ?
「日記は?」
朝から爽やかな笑顔で聞いてきた。
日記…、あっ!忘れた!
それどころじゃなかった、昨日はいろいろあって…。
あっ、『忘れた』って顔したの、絵美にしっかり見られてしまった。
みるみる笑顔が消えていった。
「ご、ごめん…。昨日帰ったら姉さんがいて…」
「響子さんがどうかしたの?」
え?知ってんの?お姉様の事…。
なんで?おとといまではいなかったのに…。
ずっと前から知ってたの?
そうなの?知らないのはおれだけなの?…。
< 28 / 200 >

この作品をシェア

pagetop