君が思い出になる前に…
それまでは、えっと『母さん』だったっけ。
「は、はい、すみません…」
けど、なんで謝ってるんだ?おれ。
「お母さん今、隣の家に行ってるよ」
片膝を立てて、アイスクリーム食べて、テレビから目を離さない。
歌番組?
浜田省吾の『悲しみは雪のように』だ。『愛という名のもとに』の主題歌だ。
懐かしいなぁ。

けど、おれの事は見慣れてるの?
昔っからずっと知ってるの?
おれはあなたの最初から弟だったんですか?
ではないですよね?そんな事聞ける訳ないよなぁ~。
仮におれが弟なら、姉の方が先にこの家に生まれた訳だし…。
だから弟な訳だし…。
悩むのは、やめようって昼間決めたけど、悩まずにはいられない。

風呂入って寝よ…。起きたら全部元通りに戻ってるかも知れないし。


「裕~!裕~!起きなさい!遅刻するよ!」
目まぐるしく過ぎたせいか、まるで死んだように熟睡してしまった。
その声にビクっと目が覚めた。
瞼をこすりながらベッドから起きてみると、目の前には…、みぽりんのポスター。
何度目をこらしても変わらない風景…。
それに、今たしか『裕』って言った…。って事は、声の主は姉さん…?
変わってない…、それも。
ヤバいなぁ、戻れなかった。
何をどうしたら元に戻れるんだろうか…。
それに今日は…、中間テストだよぉ。
参った…。

< 27 / 200 >

この作品をシェア

pagetop