君が思い出になる前に…
ズレた現実
 いつの間にか寝てしまっていた。服を着たまま。
夜中に目を覚ました。時計を見ると午前3時すぎ。
起きたついでにシャワーでも浴びるか。
部屋を出ると居間に姉さんがいた。
「まだ起きてたの?」
おれに気づいて姉さんが言った。
タンクトップに短パン姿で、牛乳を飲んでいる。
美人で底知れぬ頭脳の持ち主。その上スタイルも抜群…。
どんな男でも惚れてしまうだろうな、普通…。
いけないいけない、あくまでも姉ですから…。
「いや、今まで寝てた…。姉さんは?」
普通に会話するの初めてかも…。
「勉強に決まってんじゃない、あと半年しかないからね…」そうか、そうだよな…。
東大の理科三類を目指すには、こんな時間まで勉強しなきゃならないんだろうな…。やっぱり凄いや。
「お疲れ様です」
と言って、頭を下げた。
「ところであんたはどうするつもり?」
唇の上に牛乳で白いヒゲを作った姉さんが聞いてきた。
「おれ?これから風呂に入ります…」
「ばか、進路の話しよ」
あっ、そういう事ですか…。
「えっと、北高…」卒業しました。12年前に…。
「はぁ?なに言ってんの?あんた鳴醒じゃないの?」
驚いた顔で姉さんが言った。
「えっ、めっ、鳴醒…。そ、そんな無理でしょ…」
鳴醒高校。
県内有数の進学高ですよ、あそこは。
東高ですら比べものにならないほどの…。
「あんた、ちょっと変だよ、最近…」
と、言いますと?
「あたしの存在無視するは、馬鹿みたいな質問はするは…。本当に病気なんじゃないの?大丈夫?」ヒゲに気づき舌をペロッと出した。
「へ、変ですか?おれ…」
別に後ろめたい事じゃないけど、おどおどしながら聞いた。
< 48 / 200 >

この作品をシェア

pagetop