君が思い出になる前に…
Date
 日曜日…。
おれの記憶はあっさりと否定された。
カーテンを開けて確認するまでもなく、晴天である事はすぐ分かった。
「パラレルワールド…、か…」
窓を開け、空を見上げて独り言を言った。

「祐~!祐~!なにやってんの?絵美ちゃんきてるわよ!」姉さんの甲高い声が響いてきた。
絵美がきてる?
時計を見ると、9時過ぎてる。
そう言えば、時間も待ち合わせ場所も話してなかったっけ。昔ならドキドキして眠れなかったんじゃないかな。
きっとそうだったと思う。

居間に行くと絵美が姉さんの入れた紅茶を飲んでいた。
姉さんはそうとうな紅茶好きらしい。
「絵美ちゃん、ミルク入れようか?」
姉さんが甲斐甲斐しく世話をしている。
「はい、お願いします」
絵美の笑顔が眩しいのか、窓から入ってくる朝日が眩しいのか、その光景を目を細めて見ていた。
「おはよう!」
まるでコーラスのようにふたりの声が重なって聞こえた。
朝から元気だねぇ。絵美も姉さんも。
「おはよう…」
頭をかきながら絵美の座っているテーブルについた。
「何?その頭。ボサボサじゃないの!顔ぐらい洗ってらっしゃいよ!」
頭を小突かれ姉さんに言われた。
「あ、忘れてた…」再び立ち上がり、洗面所へ。
「まったくもう、絵美ちゃん、あんなののどこがいいの?」と、姉さんが絵美のカップに温めたミルクを注いで言った。「さぁ~?」
さぁ~って…。
なんだよ絵美まで…。
二人の笑い声が洗面所まで聞こえてくる。
鏡を見ると情けない顔をした、寝ぼけまなこの少年がいる。昔ならこんな顔のまま、好きな子の前に出る事は絶対なかったはず。
なのに、今は平気で出ていった。
これってやっぱり30歳の名残りなのかなぁ?…。
細かい事は気にしないってか?
だとしたら、情けないかも。
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